さて最後です。
今回はこの視察参加して感じたこと、しかもすり身関係の仕事の話だけでなくもう少し幅広に感じたことを書いていこうと思います。
現在我々国内の蒲鉾事業者を取り巻く環境は非常に厳しいものがあります。日本海沿岸で獲れた魚だけでかまぼこを製造している業者はほぼいないでしょうし、その業者だけの生産量ではとても日本国内の消費を賄うことができないのは自明です。
そうなると東南アジアや米国、南米などの海外に目を向けるのが必然。今は東南アジアの養殖魚の話も出ていますね。
これがひと昔前ならすり身を使用している国はほぼ日本だけで獲れたスケソウダラも割合は分かりませんが、多くはすり身生産に回っていたのではないでしょうか。そのため東南アジアなどでは乱獲がすすみ一時すり身の生産ができなくなるほど魚が枯渇したとも聞きました。
その点アメリカでは今回視察したように十分な体制で資源管理・衛生管理をしっかりして、スケソウダラが枯渇したという話は聞いたことがありません。(瞬間的に獲れない時もありましたが、すぐ回復しました)。今回視察して思ったことはその資源管理の徹底さ、魚体の大きさもしっかり計測して獲りすぎない工夫や、混獲を防ぐシステムができあがっていました。
またダッチハーバーの陸上工場は設備もしっかりとしていて、働く人たちは会社は違えど日本人スタッフが気概を持っていいすり身を作ろうという雰囲気がびしびしと伝わってきます。
そんなリーダー的日本人スタッフが現地雇用の労働者に対してしっかりとした指導をしているのも感じ取ることができました。
ということでこれで当分アメリカすり身で安泰だな、というと話はそう簡単でもありません。
世界的すり身の需要の高まり、日本のファンダメンタルズの弱さ、為替の下落などの要因によってダッチで作られたすり身は日本にもっていかなくても他の買い手がより高い値段で買ってくれるという状況になっています。
実際に私も現地で食事を食べたり、お土産を購入したりしましたが、1週間ほどの旅でなければあっという間に破産するくらいの物価でした。当然船内や工場で働く人たちの人件費も日本の3倍くらいはあるのでどうしてもすり身価格にダイレクトに反映せざるを得ない。
国内でも賃上げがかまびすしく叫ばれていますが、その開きは大きく、どんどん開いていく可能性もあります。そうなるとせっかく高品質で作られたすり身がヨーロッパ、韓国、中国など諸外国に流れていくことになります。実際今年のBシーズンは過去最高の価格になるのではないかと、すでに情報が入ってきています。国内ユーザー数が倒産や事業廃業で減っていくことはますますすり身の日本離れがすすむことになります。悪循環ですね。せっかく遠い地で日本人スタッフが苦労して作った高品質のすり身が日本人の口に入らない、ってことにもなりかねません。すでに安価な養殖魚を模索する動きや東南アジアなどの比較的安価なすり身、ロシア産のスケソウ、など代替手段を取り入れている業者もいます。
生地蒲鉾としては冷凍すり身を導入してから一貫して一番いいすり身を(つまりダッチハーバー洋上船)使い続ける、という信念でここまでやってきました。
もちろん会社が続いていくことが絶対条件なのですり身のことは日々勉強していかなければいけないと思いますが。
またもう一つ考えさせられたのが、陸上工場でも洋上船でもすり身だけを作っているわけではなく、「フィレ」の存在が俄然大きく感じられました。全世界的にはフィレの需要が強く(普通に考えたらそうなりますよね、懇親会で食べたスケソウダラのさくさくフライが美味しすぎました。)、需要が高いということは高値で売れる、すなわちフィレ生産拡大へとつながっていく懸念があります。(蒲鉾業者視点で)。もちろん魚体の大きさ等で製造する種類を分けているのだと思いますが、これからは今まではすり身に回っていたものがフィレに回ったり、大きな魚体の方がすり身も作りやすいのだけれども、フィレ優先になってすり身は小型魚が中心になり、品質が落ちることにつながるような心配もあります。
工場内で見たときにはフィレ生産はかなりの人手がかかっていて人件費がすごそうと思いましたが、それも今後の機械化の動きで安価で製造できるようなことになればその潮流はますますフィレ生産に傾くと思われます。
高品質の原料はあってあたり前、との考えからはもう脱却しなければいけない時にきているのかもしれません。そうなると我々としてはいかに少ないすり身で高品質、付加価値の高い商品を販売できるのか、を考えていかないといけないし、消費者の方々にも高品質のすり身の良さというものをもっともっと訴えていかないといけないと思いました。それが現地で苦労しながら製造している日本人スタッフの努力に答えることだと思います。
今回はアラスカシーフードマーケティング協会さまの企画で行かせていただきましたが、生産現場をじかに見るだけでなく、上記のようなことまでいろいろと考えさせられた視察になりました。
単純にダッチハーバーを含むアラスカの自然の美しさにも心ひかれるところもありましたし、その景観や自然環境を大切にしようという雰囲気もアンカレッジでは伝わってきました。(冬を見ていないのでずいぶんと勝手な印象ですが)。
最終日、ダッチハーバーからの飛行機が飛ばずに待っている時、皆さんがお食事している脇で飛行場のすぐそばにある湖を眺めながらこれから帰る日本で、黒部ですり身を扱う事業者としてどのような方向性で仕事をしていけばいいのかとの思いを巡らせていました。

こんなふうに気取ってますが、このあとのロストバッゲージや飛行場の待機時間のことなどで帰りの飛行機から帰って目の前の仕事に忙殺されて今これを書くまではそんなことを思い出すこともなかったのは事実ですが。。
富山県の組合でも一部の方が数十年前にダッチハーバーに行ったことがあると聞きました。
恐らくその時のすり身を取り巻く環境と今とは全然違うものであると思います。今回ダッチハーバー行きが決まった時嬉しい反面、この先また現地に行けることはあるのだろうか、それよりいつまでアメリカ産すり身を使い続けることができるのか、という悲壮感も持ち帰ってきました。
非常にまとまりにくい、結論の出しにくい終わり方になってしまいました。
光明があったとすれば、何度も書きましたが、現地の日本人の方々のすり身にかける思いが熱くて、まだ若い方も多かったことです。今後プロジェクトXや情熱大陸に出演するような活躍を期待しております!
最後になりますが、このたびご一緒していただいた、㈱河内屋蒲鉾河内社長、㈱スギヨ 守取締役、伏見蒲鉾㈱橋爪部長、本当にありがとうございました。北陸チームとしてまとまっていてとても楽しく過ごすことができました。
また一番のお礼を言いたいのが、アラスカシーフードマーケティング協会の現地スタッフを含む皆様、フライト欠航、遅延などあらゆるトラブルを冷静に解決していただき感謝します。特に日本人スタッフの屋形様には私の紛失したキャリーケースを日本国内まで持って帰ってきていただき感謝ひとしおです。改めてこの場を借りてお礼を申し上げます。
アラスカ産すり身と国内蒲鉾業者、大切な関係はまだまだ続きます。視察以前と今とでは製品を見る目も違ってきます。
冷凍庫に眠るすり身の箱を眺めて、自分が行ったアラスカで多くの人たちの絶え間ない努力のたまもので製造されたものだと考えることができるようになりました。













